職業訓練の入札や運営、システムについて思うこと

スポンサーリンク

職業訓練に長年携わっていると、色々と思うことも出てきます。

やっぱり国や県が軸となっているため、どうしても現場とのずれが生じるわけです。

ここでは、長年職業訓練に関わっているわたくしが訓練に対して思うことや改善点などを書きつづってみます。
はっきり言って、独り言のような記事です(笑)

わたくしよりもっと大きな立場、それこそ国や県の訓練関係者の目に留まればいいな…という願いも込めて。

※あくまでわたくしの関わっている地域でのお話です。

 

 

スポンサーリンク

現在の公共職業訓練は入札形式だが…

新規参入には圧倒的に不利な入札システム

学校が「職業訓練をやりたい!」となった場合、入札をして”訓練を行える権利”を勝ち取る必要があります。

この入札ですが、その学校の設備や訓練実績によってポイントが加点され、そのポイントが高い学校から順に落札されるという仕組みです。

そうすると、実績のない学校はそれだけでポイントが少ないため圧倒的に不利になります。
つまり新規参入の学校の入る余地はほとんどないと言ってもいいくらいですが…

一応そうならないように、もう一つポイントを加点できる要素が「価格」です。

職業訓練は、開講すると訓練生1人につき数万円が学校側に支払われます。

この数万円をMAX額で入札をすると、価格点が0点。
いくらか下げると下げた額によってポイントが加算されていきます。

例えばMAX額が40,000円だとすると、40,000円で訓練をやりたい!とすると0点。半分の20,000円でやる!となると10点とかが付くということです。

簡単に言えば、安い金額で訓練を行えばそれだけポイントが増えていくということです。

この価格点システムによって、新規参入でも安く訓練を行うのなら開催できる可能性があるということです。

ただし既存の学校は、ほとんどの設備を揃えており、また実績もあるため、価格点に頼らずともかなり高い点数を持っています。
さらに後述しますが、既存の学校同士でしのぎを削っているため、価格点をある程度つけ合うといった、まさに価格競争になっています。

こうなると、新規参入の学校が5点や10点程度を価格点で出しても全く太刀打ちできないレベルです。
ですから、新規参入の学校はタダ同然で訓練を行うしかないのです。

資金が潤沢にあるのであれば、実績作りとして最初はタダ同然で訓練を行ってもいいですが、なかなかそうもいきませんよね。
まあ結果的に新規参入の入る余地はほぼないということです。
これは都会であればあるほどその傾向が強いと言えます。

 

実績のある学校も特色が出しづらい

また、既に実績のある学校も、入札のポイント稼ぎ(というと語弊があるかもですが)のために色々な設備を整えます。

例えば、女性の社会進出を手助けする一環として、訓練中の託児サービス(訓練生は無料で受けられる)を提供できる学校には大きなポイントが加算されます。
そのため託児施設を新たに作る学校もありますし、他の認可外保育園と提携していく学校もあります(ほとんど後者でしょうね)。

はっきり言って託児サービスなんて今やほとんどの学校が揃えています。
もちろん子育て中の女性にはありがたい制度なので文句はありませんよ。

他にも色々なポイント加算要素がありますが、言ってしまえば「ポイントがつく設備はほとんどの学校が揃えてくる」ということです。

そうなると、どの学校も設備的にはそんなに違いがなくなります。
訓練をこれから受けようとする人たちにとっても、設備面から見たらほとんど違いがありません。

今度は訓練をこれから受けようとする人たちの立場になって考えてみます。

受講を希望する人たちが学校を選ぶ基準は「自分が学びたい科目がある」「アクセスの便利さ」「就職率の高さ」などでしょう。

それらに満足すれば、多くの人がそのような学校を選びます。
つまり人気学校になりますね。

しかし人気になっても訓練が開講されていなければ、希望者はその学校を選ぶことができません(当たり前)。
入札のポイントによっては訓練を開講できません。

人気があるということはニーズが高いんだから訓練を開講させればいいのに…と思いますよね。
残念ながら応募人数の実績は入札のポイントに含まれていないのです。

国や県は人気(ニーズ)など知ったことではないのです。
書類に沿ってポイントづくりをした学校が訓練を行えている、というだけなのです。

もちろん設備が充実した方が良いに決まってます。
ですが、それはあくまで訓練を行う上での最低限の基準にすぎない要素ばかりなのです。

例を挙げると、トイレが男女別にあるか、休憩室はあるか、アクセスは便利か、必要最低限の教材は揃っているか、講師は揃っているか、託児施設は完備しているか…などです。

こんなのははっきり言ってどの学校も整備してくるに決まってます。
ですから先ほども述べたように、結局価格で差をつけていくしかなくなってくるわけです。

現に、入札を勝ち取った学校でも応募が少なくて開講を断念しているケースは数知れずです。
地方になればなるほどこのような傾向にあります。

これはいかがなものかなーと思います。
応募人数も入札点として採用すべきだと個人的には思います。
(既にそうしている都道府県があったらゴメンナサイ(笑))

また既に時遅しですが、どの要素が加点になるかは非公開でよかったかと。
(既にそうしている都道府k(略))

2021/5/21追記:わたくしが携わっているところではようやく加点要素が非公開になりました。
よかったよかった。
っても今まで入札してるから加点要素を知り尽くしててバレバレなんだけど(笑)

 

 

就職率について思うこと

そもそも高い就職率における報奨金制度はもう少し考えるべき

確かに就職率が残せなければ学校どころか職業訓練という制度そのものの存続が危ぶまれますので、報奨金で釣るというのもわからんでもないです。

「就職できない職業訓練なんて制度に税金投入するなんて無駄じゃないか!」と声をあげる人が必ずいらっしゃいます。

しかしそうすることによって威圧的な学校が増えてきますし、結果的に訓練生からしたら望まない就職先に行かなければならないということもあると思います。

これでは何のための職業訓練なのかよくわかりません。結果的に離職者が増えたら意味がないと思うんですがね…

就職の条件にある「4か月以上・週20時間以上の労働」という縛りを撤廃すると解決するのかも。
他には単に報奨金をやめるか。
それで就職率が悪い学校が出たら、勝手に淘汰されていくでしょう。

あと現制度では訓練校側に言いたいことですが、「北風と太陽」と一緒で、太陽にならなきゃいかんと思うのです。うまいこと就職してもらうようにやさしく、かつさり気なく誘導。

だって訓練校が受けられるメリット(お金がもらえるとか訓練の存続)なんて、受講生の方々からしたら知ったこっちゃないわけで。

そうすると結局ラポール(信頼関係構築)が重要になってくるわけですが…

まあこのサイトも訓練生の方に就職してもらうための本当のワザは書いてないので、そのノウハウはヴェールに包んでおきます。

っと話がそれました。

 

妊娠者は就職率から除外すべき

色んな記事で散々書いておりますが、就職率は訓練校にとって死活問題です。

上記のように入札の加点要素のひとつになっていますし、訓練校に入ってくるお金にもかかわってきます。

で、妊娠した方ですが、ほとんどの確率で働くことはできません。
失業手当の延長措置を取らないといけないことから、国もそのように「妊婦さんは働けない」と認識しているはずです。

ですが、職業訓練中、あるいは訓練後に妊娠をした方も、就職率の計算に含めなければいけません。
つまり現状は「妊娠した人=就職できなかった人」扱いです。
これは運営側と妊娠した人の双方の扱いが雑。

訓練に通わず失業手当をもらっているだけの方は妊娠すると延長措置を取るくせに、なぜ訓練に通っている人が妊娠しても最後まで職業訓練に通えるのか?という疑問はずっとあります。
職業訓練って就職するためのものだよね?そのために国も予算を裂いてるんだよね?ってことです。

妊娠者は退校させても良いことにすべきか、妊娠者は就職率の計算から除外してもいいことにすべきだと思います(間違いなく後者がみんな幸せ)。

就職率という要素を設定しており、なおかつ重要なくせに、妊娠者に対しては何もケアがないのはおかしすぎます。正直、国や県が職業訓練を軽視しているとしか思えません。

だから以下のようなきつい記事を書く人も出てくるのですよ(お前だお前)。

妊娠しても最後まで職業訓練に通う方法はあるの?受講前ならどうなる?
単なる愚痴のような内容です、不快にさせたら申し訳ありません。でもこれだけ核心をついたことを書いている人は誰もいませんので是非。

 

未就職者にはなんらかのペナルティがあってもいいかも

これは訓練運営側の立場に立てば賛同、受講者側からしたら反対でしょう。

でも正直これぐらいはすべきと思います。
無料だからという理由が第一で訓練に参加する人の多いこと。

訓練中もあきらかに就職する意欲の無い人と、就職できる環境にいない方が2~3割くらいいらっしゃいます。
まあそういう人たちはやっぱり蓋を開けてみたら就職しませんでした、となる確率がほとんどです。

面接で見極めればいいじゃないと思うかも知れませんが、面接上手もたくさんいますし、経営的にそうも言ってられないこともあります。

ですから未就職の人にはなんらかのペナルティ(失業手当を一部返還、訓練内容の何割かを実費で支払う…など)を与えるべきというのが一番です。
しかしさすがにそれだと訓練に申し込む人が極端に減ると思いますので、まずは申し込み前の段階(ハローワーク窓口)で就職に対する意識調査などを徹底した方がいいかと思います。

 

就職の可能性のない人をねじこんでくるハロワ窓口はなんとかすべし(2021/5/21追記)

職業訓練に入ってしまえば、最低3か月はハローワークの窓口に来ることはほぼなくなります。

どう考えても就職できなさそうな人とか、窓口で対応するのが面倒そうな人とかも、職業訓練にねじこめばハローワークがしばらくその人のお世話をしなくて良いということになります。

そのせいか知りませんが、明らかにやる気ない人とか訓練の制度を良くわかってない人がたくさん申し込まれます。

ちゃんと応募者が希望する仕事が、資格や知識を身に付けることでどれくらいあるのかをきちんと調べさせるとか、本当に訓練に通うことで進路にプラスになるのか、就職できる環境にいらっしゃるのかなど、キャリアコンサルティングをしっかり受けさせた方が良いのではないかと思います。

 

コロナ禍でも就職率の特例がないのはおかしい(2021/5/21追記)

コロナの影響で求人はぐっと減っております。

なのに就職率はいままでどおり、報奨金もあれば低調な場合は罰則もある。

馬鹿なのでは?どんだけ現場知らないんだと。

で、一応最初の緊急事態宣言のときには就職率の緩和措置が取られました。

「就職報告期間を3か月から6か月に延長する」とね。

 

国(県)の野郎…考えられる手の中で一番の悪手をかましてきやがった…!

 

報告期間を延長しても就職率なんてかわらないってば!
コロナでしばらく就職先ないんだから。やるんなら1年くらい伸ばしてよ!(笑)

ここは報奨金がもらえる就職率を引き下げる(現状は就職率6割で半額、8割で満額)か、「4か月以上・20時間以上の雇用」とかいう馬鹿げたボーダーを撤廃するところでしょうが!

とすごく思いました。

 

 

終わりに

サービスガイドラインなんていうしょうもないものを設定する前に、現場の声にもたまには耳を傾けて下さいな。
と切に思うばかりです。

というかこの記事、誰が読むんだろう(笑)
国や県のお偉いさんに届けばいいです。比較的マジで。

むしろ職業訓練コンサルとして仕事ください(笑)

コメント

  1. 猫大王 より:

    初めまして。
    こういう説明は本当に勉強なります。
    気になる内容というか思いの丈ですよね。
    私の県はポリテクセンターは国の公務員がやっているようで駅前の施設は民間のようでした。
    民間はまともな訓練内容の説明でしたがポリテクは訓練で使う設備の特徴や教室のアットホーム感(ブラック?)など論点がズレている印象を受けました。
    民間は常にジャケットのスーツでやる気を感じられましたね。
    ポリテクの講師は高圧の上下関係があるように思えました(下は常に太鼓持ちに感じた)。
    職業訓練は通う前から年配者に色々聞いていて数名は保険延長目的は居たと誰に聞いても似たような話でした。
    結局のところポリテクは講師以外の職員が天下りだったりしてる印象を受けたので体制が変わらない限り未就職者は出続けると思います。
    職員は高年配者と障害がある職員で構成されてましたね(職員室?の印象)
    私の個人的な感想ですが国側のマンネリ感があるために未就職が居てもそれは講師のペナルティにしているようです。
    (一定の就職者がいないと転勤になるようなことを講師がちょろっと言ってました)
    おかしな雰囲気は色々な会社で見てきましたがポリテクは異常に思えました。
    ありがとうございました。

    • jimusniper より:

      コメントありがとうございます。

      やはり民間とポリテク(というか公務員)ではかなり意識は違うと思います。
      民間は学校の存続がかかっておりますからね…ポリテクはそのようなことがないので態度が悪かろうが関係ないかと思います。
      わたくしも民間の訓練に携わっておりますので、公的なところの中身はよくわかりませんが…

      色々と情報をいただきありがとうございます。
      参考にさせていただきたく思います。

タイトルとURLをコピーしました